華やかなハープの魅力を心ゆくまで味わえる名手マリサ・ロブレスのコンチェルト・アルバム。
伝説のデッカ・エンジニア、ケネス・ウィルキンソンが手掛けた超優秀録音
エソテリックによる名盤復刻シリーズ SACDハイブリッドソフト
ティアック株式会社(本社:東京都多摩市、代表取締役社長:英 裕治)は、エソテリックによる名盤復刻シリーズとして Super Audio CDハイブリッド・ソフト 3作品「ホルスト:組曲《惑星》グリーグ:組曲《ペール・ギュント》から」「ハープ協奏曲&変奏曲集」、および「シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 《ます》幻想曲 ハ長調 《さすらい人》」を販売開始致します。
20世紀が生んだクラシカル・ハープの名手
マリサ・ロブレスは1937年生まれのスペインのハープ奏者で、クラシック音楽界では20世紀後半を代表する名手として知られています。早熟の才があり、幼少時からルイサ・メナルゲスに師事して(兄弟子が名手ニカノール・サバレタ)わずか9歳でデビュー、1953年に16歳でマドリード音楽院を卒業しています。翌年、マドリードでジャン=ピエール・ランパルとモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」を共演し、コンサートデビューを果たしていますが、この曲はロブレスのトレードマークとなり、コンサートでは1000回以上演奏しているのみならず、ジェームズ・ゴールウェイとは何と4度にわたって録音(RCA)し、それらの録音を通じてこの曲のイメージが決定づけられたと言っても過言ではありません。1958年にマドリード音楽院で教鞭をとった後、結婚して1959年にイギリスに渡り、1960年にイギリス国籍を取得し永住。イギリスをベースに世界各地にツアーを行い、ハープという楽器の魅力を世界中の新しい聴衆に伝えてきました。ロドリーゴを始めとして同時代作曲家への新作委嘱も怠らず、1971年からは英国王立音楽院の教授にも就任し、若手の育成にも力を入れ、数多くのテレビ出演を通じて知名度も広がっています。
その名声に反比例する残された録音の少なさ
ロブレスはそれほどの名手であるにもかかわらず、ゴールウェイとのモーツァルトを除くとレコーディングの量はごく少ないのが、このシリーズで取り上げられるアーティストとしては珍しいほど。ロブレスは1960年代初頭からスペインのレーベルに録音を始めていますが、彼女のハープ奏者としての知名度を上げることに貢献したのは、1960年代半ばに始まる英ARGOへの録音でした。1965年のケンブリッジ・セント・ジョンズ・カレッジ合唱団によるブリテン「教会音楽集」への参加をきっかけに同レーベルとのかかわりが生まれ、1966年から67年にかけて「スペインのハープ」「フランスのハープ」「ハープによる変奏曲」という3枚のソロ・アルバムが録音されました。当ディスクの最後に収められたエーベルル、ヘンデル、ベートーヴェンの3曲のソロ曲は、1967年の「ハープによる変奏曲」に収められていたものです。ARGOレーベルは1951年に「英国のアーティストによる自国の音楽」を録音・発売すべく創立され、初期にはシェイクスピアの全戯曲の朗読レコードの発売でも知られるようになり、1957年にデッカが買収してからは蒸気機関車の録音でもヒットを出したりするなど扱いジャンルを広げています。ロブレスがソロ・アルバムを録音したのはちょうどこの頃で、彼女は結局1980年代まで間欠的に同レーベルに録音を継続することになります。
モーツァルト以外のロブレス唯一の協奏曲アルバム
ロブレスは、1981年に児童文学の名作「ナルニア国物語」の朗読レコード(英ASV)につけられたエドウィン・ロバートソンの音楽にハープの演奏で参加していたことも話題になりましたが、ほぼ同じころに録音されたのが、当ディスクのメインである3曲の協奏曲のアルバムで、当時一世を風靡していた室内楽団であるアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ[音楽監督のネヴィル・マリナーではなく、ディレクター/リーダーだったアイオナ・ブラウン(1941-2004)がコンサートマスター兼指揮者]が起用され、万全を期しています。バロック時代から初期ロマン派までの約80年の間に作曲されたハープ協奏曲の代表作が網羅されています。ゴールウェイとのモーツァルト以外では、この3曲がロブレスによる唯一の協奏曲アルバムとなっている点も価値を高めています。
作品に相応しいギャラントな華やかさが演出された名録音
レコーディングは協奏曲がロンドンのキングスウェイ・ホール、ソロ作品がウェスト・ハムステッドにあったデッカのスタジオで行われました。前者は20世紀を通じてロンドンでのレコーディングには欠かすことのできない伝説的な録音会場として知られ、電気録音最初期の1925年から取り壊される1983年まで、SP〜モノラル〜ステレオ〜デジタル時代を通じてさまざまな名盤が生み出されました。これまで当シリーズでSuper Audio CD化した中にもこのホールで生み出された名盤が含まれているのは改めて指摘するまでもないでしょう。後者のウェスト・ハムステッドの第3スタジオは、1880年代に建てられ、1928年からその一部が録音スタジオとして使われるようになり、1937年にデッカが購入してからは1990年までデッカの録音スタジオとしてクラシック音楽だけでなくポップスやロックも含め多様なジャンルの録音が行われました(ザ・ビートルズがオーディションに落ちたのも同スタジオでした)。このアルバムのソロ曲の録音が行われた第3スタジオは1961年に建て増しされたもので、フル・オーケストラの録音も可能な容積を持つスタジオとして、ステレオ技術の到来で急速に拡大しつつあった録音のニーズに応えたのでした。協奏曲とソロ曲では録音時期も録音会場も異なるので、音の傾向も異なっていますが、収録対象のサウンドの明晰さと立体感が追求されているのはデッカ・レーベルならでは。名手ケネス・ウィルキンソンがエンジニアリングを担った協奏曲では、左右に大きく広がるオーケストラの前に存在感のあるハープが位置し、通常よりも響きが多く取り入れられて作品に相応しいギャラントな華やかさが演出されています。響きが多いとはいっても、ソロもオーケストラもフォーカスがぼやけることは決してなく、オーケストラの各パートの重なり具合や編成の差異も捉えられており、ヘンデル作品でのみ加わっているチェンバロ(R chに定位)のバランスも見事に処理されています。デッカ・スタジオ録音のソロ曲では空間が狭まり、響きが少なくなる代わりに、芯のあるハープの響きが前面に出ています。ソロ曲は日本ではアナログ時代に発売されず、CD時代に入っての1992年にCDとして発売されたのが初出です。
リマスターされるのは今回が初めてで、世界初のSuper Audio CDハイブリッド化となります。これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
[収録曲]
ハープ協奏曲&変奏曲集
◇ジョージ・フレデリック・ヘンデル(1685-1759)
ハープ協奏曲 変ロ長調 作品4の6 |
[1] |
第1楽章:Andante allegro |
[2] |
第2楽章:Larghetto |
[3] |
第3楽章:Allegro moderato |
◇フランソワ・アドリアン・ボワエルデュ(1775-1834)
ハープ協奏曲 ハ長調 |
[4] |
第1楽章:Allegro brillante |
[5] |
第2楽章:Andante lento |
[6] |
第3楽章:Rondeau(Allegro agitato) |
◇アントン・エーベルル(1765-1807)
[10] |
第1楽章:主題、変奏とロンド・パストラーレ(伝モーツァルト) |
◇ジョージ・フレデリック・ヘンデル(1685-1759)
◇ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
[12] |
スイスの歌による6つの変奏曲 ヘ長調 WoO 64 |
[詳細]
ハープ:マリサ・ロブレス
指揮:アイオナ・ブラウン 指揮 [Concertos]
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ [Concertos]
録音 |
[1-9]1980年2月6日〜8日、ロンドン、キングスウェイ・ホール
[10-12]1966年6月15日〜16日、1967年3月3日、ロンドン、ウェスト・ハムステッド第3スタジオ |
初出 |
[1-8]ZRG 930(1981年)
[10-12]ZRG 522(1967年) |
日本盤初出 |
POCL2885(1992年8月26日) |
オリジナル・レコーディング |
[レコーディング・プロデューサー]
[1-9]クリス・ヘイゼル
[10-12]マイケル・ブレムナー
[バランス・エンジニア]
[1-9]ケネス・ウィルキンソン&ジョン・ペロウ |
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