世界中が絶賛する、あらゆる点で理想的なモーツァルト。
熱気渦巻くウィーン国立歌劇場でのライヴ・レコーディング。
エソテリックによる名盤復刻シリーズ SACDハイブリッドソフト
エソテリック株式会社は、エソテリックによる名盤復刻シリーズとしてSuper Audio CDハイブリッド・ソフト 3作品「ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」」「モーツァルト:ピアノ協奏曲集(第21〜23、25〜27番)コンサート・ロンドK・382」、および「ワーグナー:序曲・前奏曲集」を販売開始致します。
1991年のモーツァルト・イヤーに向けて実現したレコーディング
モーツァルト没後200年メモリアル・イヤーに向けた録音から現在にいたるまでカタログから落ちたことがない、内田光子によるジェフリー・テイト指揮・イギリス室内管弦楽団との共演によるピアノ協奏曲のアルバム集から6曲をSuper Audio CDハイブリッド3枚組にセレクト。
1991年のモーツァルト・イヤーに向けて実現した空前のレコーディング
モーツァルト没後200年のメモリアル・イヤーとなった1991年は、クラシックCD界は空前の活況を呈していました。あらゆるレコード会社やアーティストがこぞってモーツァルト作品の録音を発売しました。新録音のみならず、過去の名盤の集成もあり、その中には大部の「全集」もありました。ピアノ協奏曲の「全集」もこの年だけで4セット発売され、8曲以上を収めた「選集」は少なくとも10セットは発売されていました。その中で現在にいたるまでカタログから落ちたことがないのはごく少数しかありません。内田光子とジェフリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団との共演によるピアノ協奏曲の録音はその少数のうちの一つです。
内田光子を「世界のUchida 」にしたモーツァルト・プロジェクト
1948年熱海生まれの光子は、1961年12歳の時に渡欧し、ウィーン音楽院で学んでいます。1966年のミュンヘン国際第3位、1968年のエリザベート王妃第10位、1969年のウィーン・ベートーヴェン国際第1位、1970年のショパン国際第2位と着実にコンクール入賞歴を重ね、1971年、ウィグモア・ホールで演奏会を開きロンドン・デビュー。1972年には拠点をロンドンに移し、ヨーロッパを中心に活動しますが、なかなか評価につながらず、レコード録音も日本国内で細々と続けるのみ…という状態でした。転機は1982年、ウィグモア・ホールにおけるモーツァルトのピアノ・ソナタ連続演奏会で、その新鮮な解釈はロンドンの批評家から絶賛を浴び、さらに1984年にはイギリス室内管弦楽団を自ら指揮して同じくモーツァルトのピアノ協奏曲全曲演奏会を実現させ、その評価をゆるぎないものとしたのです。内田に注目したフィリップス・レーベルは1983年10月からピアノ・ソナタの全曲録音を開始。19851年2月にソナタが完結するや間髪を入れず同年10月からピアノ協奏曲全集の録音に乗り出し、1990年2月に収録を完了。最終巻の発売は1991年のモーツァルト・イヤーに間に合わなかったものの、後期8曲を収めた4枚組の選集が再編成されており、大きな存在感を放っていたのでした。
理想的なプロデューサーとの出会いが生んだ充実の録音
モーツァルト・プロジェクトの成功と軌を一つにするかのように、内田の快進撃が始まります。1984年には小澤征爾指揮ベルリン・フィル定期にデビュー、それ以降、欧米のメジャー・オケの定期、ザルツブルク、プロムス、ルツェルンなどの世界的音楽祭からの招聘が相次ぎました。1986年から87年にかけてはオープン間もないサントリーホールでモーツァルトのピアノ協奏曲全曲演奏を敢行、1991年にはカーネギー・ホールにもデビュー、リンカーンセンターではモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会を行うなど、モーツァルト作品は「世界のUchida 」のトレードマークとなったのでした。極めて感性的でありながらも、単にひらめきや感情に身を任せず、緻密な音楽的思考をもとに演奏を創り出していく内田のスタイルは実に新鮮で、世界の聴衆を魅了したのです。こうした内田の素質を見抜き、フィリップスで内田のモーツァルト・プロジェクトを実現させたのは、エリック・スミス(1931〜2004)。1960年代にデッカでジョン・カルショウの傍らでプロデュサーとしての仕事を学び、その後フィリップスで数々の名盤を世に送り出したスミスは、名指揮者ハンス・シュミット イッセルシュテットを父に持ち、モーツァルト研究など音楽学者としての活動でも知られていました。そんなスミスだからこそ内田のモーツァルト演奏家としての資質を見抜くことができたのでしょう。このアルバムには全集から、もっとも有名な後期協奏曲のうち短調の2曲を除いた6曲とコンサート・ロンド1曲がカップリングされています。
ジェフリー・テイトとイギリス室内管=望みうる最高のパートナーを獲得
内田のモーツァルト・プロジェクトの成功は、協奏曲のパートナーにイギリス室内管弦楽団を得たことも重要なポイントでした。オケの創設は1948年にさかのぼり、1960年から名称を現在のものに変更し、編成もレパートリーもモーツァルト作品に焦点を合わせトレードマークとしたのでした。初期には作曲家のベンジャミン・ブリテンがモーツァルト作品や自作で数多く共演を果たしていますし、内田とのピアノ協奏曲全集録音の前にも、ダニエル・バレンボイム(1967〜74年)、マレイ・ペライア(1975〜84年)とも全集録音を完成させており、内田との録音完成とオーバーラップするようにアリシア・デ・ラローチャとの選集録音がスタートしているほどモーツァルト作品での共演のニーズがありました(1991〜93年)。同団のモーツァルト様式に配慮したきめ細やかな演奏は、名手を揃えた木管パートの名技と相まって、20世紀後半に理想とされたモーツァルト像を体現しています。しかも指揮を担ったのが、1985年に同団初の首席指揮者に就任したジェフリー・テイト。テイトもまたモーツァルトを始めとする古典派の解釈に優れ、構成感を明確にした立体的な響き、クレンペラーを思い起こさせるような木管パートの絶妙なバランスづくり、音色の変化への繊細な意識など、内田との共演には不可欠な存在でしたいます。
モーツァルトの協奏曲に相応しいギャラントなサウンド
内田の全集録音は、シリーズ最初の1枚(このセットでは1985年10月録音の第21番)がヘンリー・ウッド・ホールで行われたほかは、ほとんど全てがロンドンのウエストミンスター地区にあるセントジョンズ・スミス・スクエアで行われました(日本盤は「セントジョンズ教会」と表記)。ホールの起源は1728年に完成したセントジョンズ福音教会にまでさかのぼり、200年にわたって教会としての役割を果たしていましたが、1941年のドイツ軍の空襲によって壊滅的打撃を受けてしまいます。1960年代に入って建造物の修理と保存に向けての動きが加速し、1969年にコンサートホールとして生まれ変わり、ジョーン・サザーランドのリサイタルで開場しました。それ以来コンサートとレコーディングに使われるロンドン屈指の音楽ホールと位置付けられています。フィリップスの名エンジニア、オノ・スコルツェが主に手掛けた録音では、豊かな響きに包まれながらも、響きが過剰ではなく、やや手前に置かれているピアノ独奏も、オーケストラの管楽器のソロも、ディテールの明晰さがきっちりと保たれています。そのため、モーツァルトの協奏曲では肝要なピアノと管楽器との対話的な要素も手に取るように聴きとることができます。ダイナミック・レンジも広く、特に内田のソロの特徴である弱音の静謐な表現力(例えば第27番の第2楽章冒頭のソロ)が見事に捉えられています。オーケストラの実に多彩かつ雄弁な響きは名指揮者テイトの導きによるもので、モーツァルトのピアノ協奏曲の魅力を存分に味わうことができます。発売当初から名録音として定評があったため、本格的なリマスターは今回が初めてです。
今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering 」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
『玲瓏としたピアノの音質と、隙のない緻密な彫琢』
「第22番での内田は、強い推進力を持って演奏しながらも軽やかさを失わない。表現力も豊かで、彼女の解釈は肩の力を抜いたのびのびした雰囲気を生んでいる。テイトのテンポ設定も実によく、オケも木管が特に見事。第23番でも内田の意欲が演奏に迫力を与えている。彼女のタッチは、輝きを持つときも華美に流れず、優美さを失わない。テイトのリズムとフレージングも美しい緊張感をもたらしている。」
『レコード芸術』1988年5月号・特選盤
「『戴冠式』が素晴らしい。第1楽章はごく自然に弾きながら随所にモーツァルトの表情が現れ、第2楽章も淡々と演奏されるがさわやかな印象だ。第3楽章では左手の伴奏型を強調して豊かな雰囲気をもたらし、副主題の微妙な明暗の変化も見事に生かしている。第27番も名演で、内田の演奏には一つ一つの音から立ち上る香気があり、気品を漂わせる。テイトの指揮もピアニストに気分にぴったり合わせている。」
『レコード芸術』1988年7月号・特選盤/88年度レコード・アカデミー賞受賞
「内田のモーツァルトには、鋭い感性で切り込んでいき、ついには確信を探り当てていくような直截に肌で感じられる感覚的な楽しみがある。テイト&イギリス室内管弦楽団が、そうした彼女の生きたアプローチを尊重しつつ、打てば響くように反応し、さらに増幅して弾くところに今一つの妙味がある。両者の蜜月時代を思わせる表裏一体化したアンサンブルは、各曲の持ち味を自然発生的に滲み出させており、それがほぼ全曲にわたってむらなく達成されているところが素晴らしい。第20番以降の8曲では、いずれも玲瓏としたピアノの音質と、隙のない緻密な彫琢によって、それぞれの魅力を十全にしぼりとった非の打ちどころのない名演。」
『クラシック不滅の名盤800 』1997年
「内田光子のモーツァルトは、解釈と表現について徹底的に考え抜き、それを演奏に反映させている。タッチにしてもフォルテピアノを連想させる簡素な響きから、現代のピアノにのみ可能な繊細な響きと豊かなサウンドまで驚くほど変化に富んでいる。細かいパッセージまでが徹底的に考え抜かれた上で存在理由を主張する。従って、演奏は一瞬一瞬ごとに表情が変化し、その連続が独特な雰囲気を生み出す。理性と歓声が高い次元で統合された演奏と言えよう。テイトの指揮も的確で、ソロとのバランスもよく、内田のある意味で奔放な演奏をしっかりと支えている。」
『クラシック不滅の名盤1000 』2007年
「内田のモーツァルトは彼女の絶妙なタッチで曲想の繊細でナイーヴな情感をまさにミクロの単位で表現する。この細やかな表情は欧米のピアニストにはない、まさに稀有のピアニズムといえるだろう。ピアノのタッチ一音一音が真珠の一粒一粒のようにつながり、旋律の美しい抑揚をしなやかな流れの中に描いていく。ここでのオーケストラとのフレーズのやり取りも、自然な対話のように息が合って淀みなく流れる。」
『最新版・クラシック不滅の名盤1000 』2018年
[収録曲]
◇ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)
■DISC 1
ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467(カデンツァ 内田光子) |
[1] |
第1楽章:Allegro |
[2] |
第2楽章:Andante |
[3] |
第3楽章:Allegro vivace assai |
ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K.503(カデンツァ 内田光子) |
[4] |
第1楽章:Allegro maestoso |
[5] |
第2楽章:Andante |
[6] |
第3楽章:Allegretto |
コンサート・ロンド ニ長調 K.382 |
[7] |
Allegretto grazioso |
[8] |
Adagio |
[9] |
Allegro |
■DISC 2
ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482(カデンツァ 内田光子) |
[1] |
第1楽章:Allegro |
[2] |
第2楽章:Andante |
[3] |
第3楽章:Allegro Andante cantabile Tempo I |
ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482(カデンツァ モーツァルト) |
[4] |
第1楽章:Allegro maestoso |
[5] |
第2楽章:Adagio |
[6] |
第3楽章:Allegro assai |
■DISC 3
ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537《戴冠式》(カデンツァ 内田光子) |
[1] |
第1楽章:Allegro |
[2] |
第2楽章:Larghetto |
[3] |
第3楽章:Allegretto |
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595(カデンツァ 内田光子) |
[4] |
第1楽章:Allegro |
[5] |
第2楽章:Larghetto |
[6] |
第3楽章:Allegro |
[詳細]
内田光子(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
指揮:ジェフリー・テイト
録音 |
[第21番]1985年10月7日〜10日、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
[第22・23番]1986年7月20日〜24日、ロンドン、セントジョンズ・スミス・スクエア
[第25番]1988年5月11日〜13日、ロンドン、セントジョンズ・スミス・スクエア
[第26・27番]1987年6月19日〜21日、ロンドン、セントジョンズ・スミス・スクエア
[ロンド]1990年2月1日、ロンドン、セントジョンズ・スミス・スクエア |
初出 |
[第21番]PHILIPS 416 381-2(1986年)
[第22・23・25・26・27番・ロンド]PHILIPS 416 381-1、他 |
日本盤初出 |
[第21番]フィリップス 25PC5300(1986年6月5日)
[第22・23・25・26・27番・ロンド]フィリップス 32CD410 |
オリジナル・レコーディング |
[アーティスト&レパートリー・プロダクション]
[第21・22・23・25・26・27番]エリック・スミス、ウナ・マルケッティ
[ロンド]イヴ・エドワーズ
[レコーデイング・プロデューサー]
[第21番]マイク・ブレムナー
[第22・23・25・26・27番・ロンド]ウィルヘルム・ヘルヴェーグ
[バランス・エンジニア]
[第21番]ハンス・ラウタースラーガー、ウィルヘルム・ヘルヴェーグ
[22・23・25・26・27番・ロンド)ウィルヘルム・ヘルヴェーグ、オノ・スコルツェ
[ロンド]ウィルヘルム・ヘルヴェーグ
[レコーディング・エンジニア、エディティング・エンジニア]
[第22・23・25・26・27番]エルド・グロート
[ロンド]スタン・タール、アーヴィン・デ・セスター、エヴァート・メンティング |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。