ESOTERICならではのこだわりのSuper Audio CDハイブリッド・ソフト
マスターサウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で継続して高い評価をいただいているESOTERICによる名盤復刻シリーズ。 発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤を貴重なマスターから進化したテクノロジーと感性とによってDSDマスタリングし、 新たなSuper Audio CDハイブリッド化を実現してきました。今回はDECCA、旧フィリップス、旧EMIの名盤から、アナログ時代およびデジタル初期を代表する名演・名録音4タイトルをSuper Audio CDで発売いたします。
名指揮者シノーポリのユニークな経歴
イタリアの名指揮者ジュゼッペ・シノーポリ(1946-2001)が世界的に注目されるようになったのは、医学と音楽の2つの道を究めた作曲家・指揮者としてクローズアップされるようになった1980年代のこと。 パドヴァ大学で心理学と脳外科を学ぶと同時に、マルチェルロ音楽院で作曲を専攻し、ダルムシュタットではシュトックハウゼンやマデルナのクラスに在籍、ウィーン音楽院では、ハンス・スワロフスキー指揮法を学ぶ、という経歴を持ち、 1975年に師の名を冠したブルーノ・マデルナ・アンサンブルを設立し、現代音楽の演奏で音楽シーンに登場したシノーポリが、ドイツ・グラモフォンにブラームスのオーケストラ付き声楽曲集やヴェルディ「ナブッコ」全曲盤を録音したのが1982年のこと。 この時点ではベルリンやウィーンでのイタリア・オペラ上演での熱烈な指揮ぶりがすでにヨーロッパ中を席巻していました。
イタリアもので火を噴く熱いカンタービレ
シノーポリは、特にヴェルディとプッチーニのオペラ諸作におけるそれまでのイタリア・オペラの王道の演奏様式とはかけ離れたドラマティックな解釈で高い評価を獲得しました。 音楽解釈に精神医学的観点を援用し、テンポの自在な伸縮や不意のアクセントの強調など、各声部に粘着質なまでの入念な表情付けを施すかと思えば、野獣を思わせるような強烈なエネルギーを放出させるなど、 知的分析と、本能的な激しい表出意欲が共存する、それまでになかった個性的なその音楽作りは、熱烈な崇拝と批判を同時に呼び起こしました。そうした中で、1980年12月のウィーン国立歌劇場のデビューが新演出上演の 「アッティラ」であり、ドイツ・グラモフォンへの最初のオペラ録音がベルリン・ドイツ・オペラで終演後30分間拍手が鳴りやまなかったという「ナブッコ」を選んだというのも、シノーポリとヴェルディとの縁を感じさせます。
ウィーン・フィルとの優美なヴェルディ
そんなシノーポリが1983年12月にウィーン・フィルと録音したヴェルディの8曲のオペラの序曲・前奏曲。シノーポリとウィーン・フィルの演奏会での共演はカルロス・クライバーの代役に立った1992年3月の日本公演が最初ですが、 すでに1983年6月にはシューマンの交響曲第2番とマンフレッド序曲をドイツ・グラモフォンに録音しており、またそれ以前にはウィーン国立歌劇場での共演(上記「アッティラ」のほか1982年の「マクベス」)を重ねており、 お互いに馴染みの存在ではありました。ウィーンでのセッションの直前にはベルリン・ドイツ・オペラとの「マクベス」をフィリップスに、直後には英国ロイヤル・オペラとの「マノン・レスコー」をドイツ・グラモフォンに録音するなど、 ちょうどCDという新しいフォーマットのための新規カタログ拡大が急務であったレコード業界における「時代の申し子」ともいうべき積極的な録音活動を始めていたシノーポリの勢いが、このヴェルディ序曲集にもそのまま封じ込められています。 またウィーン・フィルの体質ゆえか、シノーポリは持ち前の激烈な解釈を押し付けるのではなく、オーケストラの持つ優美な音色を積極的に生かすようにしているのもこの録音の特徴で、 「運命の力」や「ナブッコ」の冒頭の柔らかな金管の響かせ方、「アイーダ」や「椿姫」での流麗なカンタービレなど、決して美感を損なわずにヴェルディの音楽のエッセンスを伝えることに成功しています。 この特質は、やがてシノーポリの1990年代以降の短い最晩年の演奏で聴かれるようになる、急速に変化・成熟してゆく音楽作り(1992年にシュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者就任以降)の萌芽ともいえるでしょう。
ムジークフェラインに鳴り響くウィーン・フィルのサウンド・イメージを理想的な形で再現
このシノーポリによるヴェルディ序曲集は、1980年3月にハイティンク指揮によるブラームス「ドイツ・レクイエム」で開始されたウィーン・フィルによるフィリップス録音の初期に当たります。 収録会場のムジークフェラインザールは、無人の際は残響成分が多く、レコーディングが難しい会場として知られていますが、フィリップス(初出盤にはスタッフ・クレジットはなし)ならではの熟練のマルチ・マイク・テクニックと編集過程での巧みなミキシングにより、 オーケストラの各パートの細かな動きを克明に記録しながら、同時にムジークフェライン全体に鳴り響くウィーン・フィルのサウンド・イメージを理想的な形で再現しています。 フィリップスはこの後ハイティンク、プレヴィン、小澤征爾、コリン・デイヴィス、ヴァレリー・ゲルギエフらとの録音プロジェクトを続々と実現し、「フィリップスのウィーン・フィル」のサウンド・イメージを確立していくことになりますが、 その初期の所産であるこのヴェルディ序曲集にも、フィリップスならではのノーブルで雰囲気のある音作りがすでに実現されています。まだアナログ盤が並行して発売されていた時代のデジタル初期の録音で、今回が初発売以来初めての本格的なリマスターとなります。 今回のSuper Audio CD ハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。 特にDSDマスタリングにあたっては、新たに構築した「Esoteric Mastering」を使用。入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。 またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
■『繊細かつダイナミックな、しかも濃厚な情感をこめた名演』
「シノーポリはここでは、充分にシンフォニックに各曲を表現しているが、やはりこれらの曲がまぎれもなくオペラの前奏曲であることを強烈に主張しているように思える。それは旋律を力強くうたわせている、カンタービレのものすごさにある。 しかもウィーン・フィルのシルキー・ストリングスにうたわせているところに、このレコードのチャームポイントがあうべきというべきなのだろう。ヴェルディのメロディ・メーカーとしての才能が、これほど美しく大胆に発揮された前奏曲の前例というのを知らない。 これをきくとシノーポリの振る、ヴェルディのオペラの全曲盤をぜひききたくなってくる。」(初出盤ライナーノーツより)
「シノーポリはウィーン・フィルの持てる力を遺憾なく発揮させ、自己の主張を充分に示している。それはこれらのレパートリーに対する彼の自信と余裕に基づくのだろう。たとえば打楽器のパートに対する考え方など明確だし、クレッシェンドに対する概念とそれへの配慮もはっきりしている。 そして曲をとことん掘り下げ、練りに練って細かな点まで計算し尽くしている。それにオケの弦が大変美しい。」(『レコード芸術』1985年5月号、特選盤)
「ここでもウィーン・フィルという名オーケストラをドライヴしつつ、繊細かつダイナミックな、しかも濃厚な情感をこめた名演を繰り広げている。序曲一つ一つにシノーポリは重い内容を持たせた。」(『クラシック・レコードブック VOL.2 管弦楽曲編』、1985年)
[収録曲]
ジュゼッペ・ヴェルディ Giuseppe Verdi
[1] |
歌劇《運命の力》:序曲(シンフォニア)
La forza del destino: Sinfonia |
[2] |
歌劇《アイーダ》:前奏曲
Aida: Preludio |
[3] |
歌劇《アッティラ》:前奏曲
Attila: Preludio |
[4] |
歌劇《ルイザ・ミラー》:序曲(シンフォニア)
Luisa Miller: Sinfonia |
[5] |
歌劇《椿姫》:第 1 幕への前奏曲
La traviata: Preludio (Atto I) |
[6] |
歌劇《椿姫》:第 3 幕への前奏曲
La traviata: Preludio (Atto III) |
[7] |
歌劇《仮面舞踏会》:前奏曲
Un ballo in maschera: Preludio |
[8] |
歌劇《ナブッコ》:序曲(シンフォニア)
Nabucco: Sinfonia |
[9] |
歌劇《シチリア島の夕べの祈り》:序曲(シンフォニア)
I vespri siciliani: Sinfonia |
詳細
録音 |
1983年12月19日〜22日
ウィーン、ムジークフェラインザール |
初出 |
【LP】411 4691【CD】411 4692(1984年) |
日本盤初出 |
【LP】25PC5052(1985年2月21日)【CD】35CD145(1985年3月1日) |
オリジナル・
レコーディング |
記載なし |
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