オリジナル・マスター・サウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で継続して高い評価をいただいているエソテリックによる名盤復刻シリーズ。発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤をオリジナル・マスターからDSDマスタリングし、世界初のSuper Audio CDハイブリッド化を実現してきました。最近ではデジタル時代の名盤を続々とSuper Audio CDハイブリッド化しており、16ビット/44.1kHz音源でもリマスターの効果が十分に出ることを実証してきました。このデュメイとピリスによるヴァイオリン・ソナタ集は、1990年代に世界を席巻した空前のデュオの最上の姿をとどめた演奏を今回特別に1枚にコンパイルしたもので、世界で初めてSuper Audio CDハイブリッドとして発売いたします。
■「自由闊達でありながら、音楽の構成をしっかりと描き切った演奏」
「デュメイとピリスはともにラテン的な感性を持ち、それが合わさって従来の重厚なイメージのブラームスの音楽を大きく塗り替えることに成功した。洗練された表現によって美しく旋律を歌わせるデキュメイに対し、ピリスのピアノはもっと磨き抜かれた切れ味の鋭さがあるのだ。その両者の違いが時に協奏的に個性を主張し、デュオをより重層的なものにしているのである。ブラームスの音楽の構造をしっかりと守りながら、そこに巧みに色彩を付与したこの演奏を、南の世界への憧れを抱いていたブラームスが聴いたならばきっと大いに喜んだことだろう。」(ブラームス)
「フランクのソナタは作品がもつ多面的な魅力を余すところなく表現し尽くした名演だ。これほど自由闊達でありながら、音楽の構成をしっかりと描き切った演奏は滅多にない。デュメイのしたたるような美しい音色にピリスのクリスタルの輝きを持つピアノが絶妙の対比を形成するとともに、高次元で一つの統一された世界を実現している。それはヨーロッパの諸文化を統合したようなフランクの音楽にぴったりだ。」(フランク)
『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 室内楽曲編』1998年
「デュメイはラテン的で洗練された表現力と包容力豊かな音楽性、磨き抜かれた美音を駆使して、上品で味わい深い音楽を語り継いでいくヴァイオリニスト。ピリスは明快なタッチによる清冽な音と響き、シャープな感受性と緻密な表現力で集中力の高い演奏を聴かせるピアニストである。本質的に異質の二人が密度の濃いデュオを実現させ、個性豊かなブラームスを繰り広げている。デュメイの語り口はのびやかで、ふくよかな表情が美しい。ピリスは感覚の冴えを見せ、音楽を引き締めている。」(ブラームス)
「ピリスの美しく誠実な音、そして深い思索は、人間にとっての音楽の意味を教えてくれるようだ。一方のデュメイも同様の資質と言え、技巧はもとより、感性が天性の音楽家であり、それが愛するヴァイオリンという楽器で発揮されているような気がする。高い気品の中にヒタヒタと寄せてくる精緻な訴え。室内楽を聴く喜びに満たされる。」(フランク)
『クラシック不滅の名盤800』1997年
「デュメイとピリスが達成したブラームスのヴァイオリン・ソナタは、鋭敏な感覚を持つ2人の感性が、互いの動きを洞察しながらおのずと接点を見出していくという、スリルに満ちたデュオを展開しており、そこには従来の重厚なブラームスの面影は微塵もなく、全く新たな切れ味の鋭い、研ぎ澄まされたブラームスの美の世界に聴く者を誘ってくれる。2人の微妙な感覚の相違は、時に協奏的な動きを生み、時には巧みな色付けを施して、想像だにしない新鮮なブラームス像を生み出している。」
『レコード芸術選定クラシック不滅の名盤1000』2007年
「デュメイ、ピリスとともにレコーディング・アーティストとして絶頂期にあった時代の幸福な記録。何より演奏全体に横溢するロマンティックな感興の盛り上がりと、作品の魅力を全開にするデュオとしての相互作用にぐいぐい引き込まれる。水も滴るような艶っぽい美音を駆使して朗々と歌い上げるデュメイ、クリーンで清楚な歌い口の中にも燃えるようなドラマを内包するピリスと、それぞれの高い充実度が触発しあって、円満な果実に昇華したのだろう。響と質感が美しい録音も、大きな加点要素となっている。」(ブラームス)
「私が今まで聴いたヴァイオリンとピアノによるデュオの中で、両者が対等で、しかも両者の長所が共演することによってさらに増幅され、1+1が3にも4にもなる真のデュオは、デュメイとピリスのデュオにとどめを刺すといっても決して過言ではない。彼らがデュオを組んだのは残念ながらそう長くはなかったが、残された最高の成果の一つがこのフランクである。グリュミオーの衣鉢を継ぐデュメイの比類のない美しい音色、ピリスの作品の内実を引き出す深い響きと細やかな表現、互いの表現に即座に反応する対話の妙、これらが相俟って生み出されるフランス的な香気やエスプリの響きは、作品の真実を照らし出して余すところがない。」(フランク)
『最新版・クラシック不滅の名盤1000』2018年
ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K. 304(300c)