価格の制約を取り払い、限界を突き詰めたサウンドチューニング
12シリーズは、新世代のフラッグシップモデルである10シリーズのコアテクノロジー「ディスクリートDAC(Marantz Musical Mastering)」および「電流帰還型プリアンプ+スイッチング・パワーアンプ構成」を継承しながら、10シリーズの半額の30万円という価格を実現するという使命を帯びて誕生しました。それゆえに、パーツの選択においてはコストと性能のバランスを常に意識することを求められました。もちろん30万円という価格において最高のパフォーマンスを実現するという前提は揺るぎないものであり、完成した12シリーズはマランツのHi-Fiコンポーネントの中核を担うにふさわしい性能を備えていました。
一方で、製品ラインアップにおける役割や価格帯という制約から解き放たれ、「12シリーズというプラットフォームに秘められた潜在能力を限界まで引き出したい」という欲求は企画・開発チームの中に強く残っており、12シリーズの発売から時を置かずしてスペシャルモデルの検討が開始されました。
外装については10シリーズと同様に、銅メッキシャーシ、5mm厚のアルミトップカバー、アルミ無垢材から削り出されたインシュレーターを採用。これらはコストに大きく影響するパーツではありますが、音質面のメリットも非常に大きなものがあります。他方アナログオーディオ回路のチューニングとしては、12シリーズの音質傾向を変えることなくクオリティをアップさせるために敢えてコンデンサーの変更は行わず、抵抗をグレードの高い金属皮膜抵抗に置き換えることでS/N感の向上とより広い音場空間の再現を可能にしました。
12 OSEシリーズは、オーディオと音楽への造詣が深いユーザーが多く、世界でも有数のプレミアムHi-Fiオーディオマーケットである日本市場向けの専用モデルです。ベースモデルである12シリーズの宿す潜在能力を余すところなく引き出すことにより、さらに高められた音楽性をぜひお確かめください。
特徴
新開発のHDAM®-SA3搭載 電流帰還型プリアンプ
Audio Consolette、そして名機Model 7を原点とするマランツのプリアンプ開発において受け継がれてきた哲学は「入力信号の鮮度をいささかも損なうことなく、パワーアンプに送り届けること」。アナログレコードからCD、スーパーオーディオCD、そしてハイレゾ音源へと再生されるソースが広がりを続ける現代においても私たちの根底にある哲学は変わることはありません。数値化可能なスペックの領域にとどまることなく聴感上のわずかな変化にまで徹底的にこだわり、原音再生を追求しています。PM-12 OSEにおいては、スイッチングアンプの採用により、従来のアナログアンプにおいて大きなスペースを占めていたパワーアンプ回路およびヒートシンクが小型化され、このクラスのプリメインアンプにおいて、かつてないほどの大きなスペースをプリアンプのために使用することが可能になりました。このスペースを最大限に活かし、音質を最優先した回路設計およびパーツ選定を行い、マランツ独自の高速アンプモジュールHDAM®-SA3を用いた電流帰還型アンプにJFET入力とDCサーボ回路を組み合わせた1段構成のプリアンプ回路を新開発。定評ある情報量の豊かさやハイスピードなサウンドに磨きをかけると同時にカップリングコンデンサーの使用個数を減らし、音声信号の解像度および透明感を大幅に改善しました。
大容量で高品位なプリアンプ専用電源回路
PM-12は、プリアンプ専用の電源回路を搭載することにより、パワーアンプによる電力消費量の変動に影響を受けない安定した電源供給を可能にしています。高純度かつゆとりのある電源供給のために、プリアンプ専用に大容量トロイダルコアトランスを搭載。トランス外周には珪素鋼板とスチールケースによる2重のシールドを施し、漏洩磁束による周辺回路への悪影響を抑えています。整流回路には、超低リーク電流ショットキーバリアダイオードを採用。また、平滑回路には新規開発のエルナー製カスタムブロックコンデンサー(6800μF / 35V)を採用し、高品位かつハイスピードな電源供給を可能にしています。
リニアコントロール・ボリューム
ボリューム回路には新たにJRC製の最新型高性能ボリュームコントロールICを採用しました。可聴帯域外に至るまで優れた特性を備えており、機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差が生じないため、空間表現力を大きく向上させることができます。ゼロクロス検出によるゲイン切り替えにより、ボリューム操作時にクリックノイズが発生することもありません。加速度検出システムにより、ゆっくり回すと0.5dBステップで高精度に、早く回すと素早く音量を調節することができます。可変抵抗体を使用していないため、ボリュームパーツの経年劣化に伴う音質の変化もなく、長期にわたり安心して使うことができます。
F.C.B.S. (Floating Control Bus System)
最大4台(8チャンネル)までPM-12 OSEのボリュームを連動させることができるF.C.B.S.機能を搭載。複数のPM-12を使ったバイアンプドライブやマルチアンプドライブ、そしてサラウンドシステムの構築など、用途に応じて柔軟にシステムの拡張が可能です。例えば、2台のPM-12 OSEをそれぞれ左ch、右chに割り当て、バイワイヤリング対応スピーカーの高域と低域を1台のPM-12 OSEでドライブするコンプリート・バイアンプ・システムを構成することによりL/Rのチャンネルセパレーションを高め、空間表現力をさらに高めることができます。
Hypexスイッチング・パワーアンプ・モジュール
音質に妥協することなしに、これまでのプリメインアンプのサイズの制約を超えた大出力とスピーカー駆動力を実現するために、Hypex社製 NCore® NC500スイッチングアンプモジュールを採用。NC500は、電力効率とスペースファクターに優れるだけではなく、低域から高域に至るまで歪が極めて少なく、接続されるスピーカーのインピーダンスにかかわらず周波数特性が変化しないという非常に優れた性能を備えたスイッチングアンプモジュールです。PM-10では4基のモジュールをBTL構成で使用していましたが、PM-12 OSEでは2基のモジュールを搭載。高さを抑えた筐体ながら200 W / 4Ωの大出力を実現しています。また、保護回路の改良によるスピーカーリレーの排除とパワーアンプ・モジュールのシャーシへの取り付け方法の改良により、パワーアンプ・モジュールからスピーカー端子までの経路を約10mmにまで短縮し、接点数も半減させました。その結果、ダンピングファクターがPM-14S1の4倍以上となり、劇的なスピーカー駆動力の向上を実現しました。
Marantz Musical Premium Phono EQ
MM型、MC型両方式のカートリッジに対応する新開発の「Marantz Musical Premium Phono EQ」を搭載。20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと40dBのゲインを持つ無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成を採用することにより、1段当たりのゲインを抑え、低歪を実現しました。音声信号が通過する信号経路はすべてディスクリート回路により構成。JFET入力とDCサーボ回路の追加によってカップリングコンデンサーを排除し、繊細な音声信号の純度を損なわない増幅を可能にしました。フォノイコライザー基板はスチール+珪素鋼板によるシールドケースに収め、外来ノイズによる影響を排除しています。
厳選された高音質パーツ
プリアンプ回路やフォノイコライザー回路には、ハイグレードな高音質フィルムコンデンサーやマイカコンデンサー、高音質電解コンデンサー、精密メルフ抵抗など、リスニングテストによって厳選された高音質パーツを贅沢に使用しています。PM-12 OSEにおいては、プリアンプ部に使用されている抵抗の内17点を金属皮膜抵抗に置き換えることでS/N感の向上とより広い音場空間の再現を可能にしました。
純銅削り出しピンジャック&スピーカーターミナル
CD入力とフォノ入力には純銅削り出しのピンジャックを採用。スピーカー出力にも同様に純銅削り出しのスピーカーターミナルを採用しています。一般的な端子に用いられる真鍮に比べて硬度が低く、機械加工の難しい純銅のブロックを熟練工が一つ一つ手作業で切削加工して生産される特注品です。銅は銀に次ぐ極めて高い電気導電性を持ち、再生音に力強さと安定感をもたらします。表面処理はリスニングテストの結果、従来のニッケル下地+金メッキの2層から厚みのある1層のニッケルメッキに変更しています。
徹底的なノイズコントロール
スイッチング・パワーアンプ・モジュールや電源回路などから発生するノイズや漏洩磁束による干渉を最小限に抑えると同時に外来のノイズによる音質への影響を防止するために入念なノイズ対策を施しています。リアパネルやシャーシ、パワーアンプ・モジュール間にはシールド効果に優れた銅メッキ鋼板を使用。また、フォノイコライザー基板はスチール+珪素鋼板によるシールドケースに収めて周辺回路からの干渉を抑えています。内部配線には、リスニングテストを繰り返しながら効果的なポイントにフェライトコアを挿入してノイズを低減。さらに電源回路にはチョークコイルを追加して電源ラインからのノイズの流入を防いでいます。
視認性に優れる有機ELディスプレイを新採用
ディスプレイには、フルドット式の有機ELディスプレイを新たに採用。操作を行った際に表示を一時的に大きくするなど見やすさを改善しています。また、ディスプレイを斜め方向から見た際の視認性も大幅に向上しています。
その他の特長
- Power Amp In
- Rec Out
- 5mm厚アルミトップカバー
- ダブルレイヤードシャーシ
- アルミ削り出しインシュレーター
- ディスプレイオフ
- イルミネーションオフ
- トーンコントロール
- 左右バランスコントロール
- ヘッドホン専用アンプ
- CDプレーヤーの操作も可能なリモコン
- リモートコントロール端子
- オートスタンバイ機能(30分)
- 着脱式電源コード
仕様説明
オーディオ特性
定格出力 |
200 W + 200 W(4 Ω、1 kHz、T.H.D. 0.1 %) 100 W + 100 W(8 Ω、1 kHz、T.H.D. 0.05 %) |
全高調波歪率 |
0.005 %(100 W、8 Ω、1 kHz) |
周波数特性 |
5 Hz - 50 kHz (±3 dB、CD、1 W、8 Ω) |
ダンピングファクター |
500(8 Ω、20 Hz – 20 kHz) |
入力感度/
入力インピーダンス |
PHONO(MC)250μV / 100 Ω、PHONO(MM)2.3 mV / 39 kΩ、CD / LINE 220 mV / 13 kΩ、POWER AMP IN 1.1 V / 13 kΩ |
PHONO最大許容入力 |
MC 8 mV(1 kHz)、MM 80 mV(1 kHz) |
RIAA偏差 |
±0.5 dB(20 Hz – 20 kHz) |
S/N比
(IHF Aネットワーク、8Ω) |
PHONO(MC)75 dB(0.5 mV入力)、PHONO(MM)88 dB(5 mV入力)、CD / LINE 107 dB(定格出力) |
入出力端子
音声入力端子 |
アンバランス × 5、PHONO × 1、POWER AMP IN × 1 |
音声出力端子 |
RECアウト × 2、ヘッドホン × 1 |
その他入出力端子 |
マランツリモートバス(RC-5)入出力 × 1、F.C.B.S.入出力 × 1 |
総合
消費電力 |
130 W |
待機電力 |
0.2 W |
最大外形寸法 |
W440 x H127 x D453 mm |
質量 |
15.7 kg |
付属品 |
取扱説明書、リモコン(RC005PMSA)、ショートプラグ × 2(PHONO)、単4形乾電池 × 2、電源コード |