超豪華ソリストを配した現代楽器による極めつけのブランデンブルク協奏曲。アナログ録音最後期の収録。これぞフィリップス・サウンドと言わんばかりの、派手さを抑えた、静謐かつ包容力のある室内楽の録音・演奏。指揮者マリナーが長年培ってきた仲間と豪華ゲストにより、バッハの本質を深く掘り下げる。
マリナーの二度目の録音となるブランデンブルク協奏曲で、一流ソリスト達を器楽奏者に迎え入れたとても豪華なラインナップ。全盛を極めたアナログ録音の最後期に相応しいLPレコード時代の掉尾を飾るレコーディングをDSDマスタリング& Super Audio CDハイブリッドディスク化。
豪華なソリストが一同に介したアナログ時代の掉尾を飾るブランデンブルク協奏曲
マリナーの二度目の録音となるブランデンブルク協奏曲です。一流ソリスト達を器楽奏者に迎え入れたとても豪華なラインナップ、それを支えるのは自身と大変深い関係にあったオーケストラ。マリナーは両者を巧みにまとめあげ、自身がとことん納得の行く内容を究めた、現代楽器によるバッハを展開しています。加えて1980年と言えばヨーロッパのメジャー・レーベルがアナログからデジタルに録音方式を切り替える重要な時期。本作は全盛を極めたアナログ録音の最後期に相応しい、LPレコード時代の掉尾を飾るレコーディングだったのです。
ヴァイオリニスト、マリナーを指揮者にしたアカデミー室内管弦楽団
ネヴィル・マリナーは、91歳の2016年4月に最後の日本公演を行なった後、10月2日に92歳で急死したイギリスの名指揮者です。イングランド中東部のリンカンに生まれ、ヴァイオリンをロンドンの王立音楽院とパリ音楽院で学び、1949年から王立音楽院で教えながら親しい音楽学者、チェンバロ奏者サーストン・ダートが結成したジャコビアン・アンサンブルに加わりバロック音楽を演奏、同じく指揮をピエール・モントゥーから学び始めます。1952年からフィルハーモニア管弦楽団のヴァイオリン奏者、1956年からロンドン交響楽団の首席第2ヴァイオリン奏者を務めながら指揮活動をはじめます。きっかけとなったのは、1958年にロンドンの名所トラファルガー広場に面したセント・マーティン・イン・ザ・フィールド教会が主催する6回のコンサートでした。マリナーと選りすぐった名手たちとの演奏は大好評だったため、チェンバロを含む12人の室内合奏団を結成、後援してくれた教会の名称を付けたアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールド(日本での呼称:アカデミー室内管弦楽団)の指揮者として活動を開始したのです。
当初はイタリア・バロックやヘンデルとバッハを主要なレパートリーにして活躍、1960年代の中頃から多くの録音によって世界的に注目されると随時メンバーを増員してレパートリーもハイドンとモーツァルト、ロマン派におよび、従来の室内管弦楽団の概念をくつがえすような活動を続けます。マリナー自身も1968年にロンドン交響楽団のヴァイオリニストを退団して指揮に専念、1969年録音のヴィヴァルディの《四季》が世界的に大ヒットするなど3年連続で国際的なエディソン賞を受賞するまでになりました。
1978年にアカデミー室内管弦楽団のディレクターをアイオナ・ブラウンに譲り、1979年からはミネソタ管弦楽団、1983年からはシュトゥットガルト放送交響楽団の音楽監督を務めるとともに世界各地のオーケストラに客演して活躍しましたが、その後もアカデミー室内管弦楽団の指揮と録音は最後まで続けていきました。
当時盛んにレコーディングされ始めたオリジナル楽器演奏へのマリナーの見解がここに
本作は最初の「ブランデンブルク協奏曲」から9年後の録音です。1回目に行った「初稿復元」に次いでマリナーは、通常演奏される献呈譜、つまり最終稿による録音をここで行いました。演奏スタイルも少なからず変化しています。第1回の録音に聞かれた、肩ひじ張ったとも言えそうな力感溢れるアプローチに対し、こちらは程よくリラックスした演奏で、謂わば「円熟」の境地というのでしょうか、初稿と最終稿の性格の違いを演奏で描き分けた内容になっています。
加えて当時は古楽器によるリリースが多く増えた時期でもありました。「古くて新しい」演奏はマリナーのようにモダン楽器でバロック演奏を行ってきた意識の高い音楽家にとって、これは少なからぬ衝撃だったのでしょう。ここには彼らに対するマリナーのモダン楽器室内管弦楽団の培ってきた、一つの姿勢、音楽的回答が秘められている、とも言えるのです。
ソリストは豪華絢爛、各楽器のスーパースターが集結
マリナーとアカデミー室内管弦楽団による一連のレコーディングの中でも、この2度目のブランデンブルク協奏曲全集は、デジタル録音が本格化する前の1980年に行われたアナログ時代の最後を飾る録音で彼らの代表的な作品と言えるでしょう。それぞれソロ楽器が異なる全6曲の多様性に合わせ世界的な名手を集めてソリストに起用、バッハ音楽の魅力、素晴らしさを鮮明に表現している名演として40年以上聴き継がれているディスク、その初Super Audio CD化なのです。
多くの高名なソリストの数人をご紹介いたします。
- ■ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
1918年にポーランドで生まれ、ヨーロッパの伝統的な音楽を完璧にマスターし名声を得た後、1946年メキシコにわたり国籍を取得。同じくポーランド出身のピアニスト、ルービンシュタインとともに国際的な知名度で活躍をした20世紀を代表するヴァイオリニスト。
- ■ハインツ・ホリガー(オーボエ)
1939年スイス生まれ。64年ミュンヘン国際コンクールで優勝。オーボエというリード楽器の表現領域を無限に広げた、と言われる人で、引き締まった明るい美音、多彩な音色を自在に使いこなしながら披露する見事なフレージングにより、「スーパー・オーボイスト」と称され、オーボエ史上最高の天才奏者。
- ■ジャン=ピエール・ランパル(フルート)
1922年フランス、パリ生まれ。フルート革命、フルート新発見とも言われる20世紀後半をリードした人で、完全無欠のテクニック、太陽の輝きにも似たと称された豊麗な音色、包容力ある音楽性を駆使した、フルート界の第一人者。
- ■ミカラ・ペトリ(リコーダー)
1958年デンマーク、コペンハーゲン生まれ。レコーディング当時20代であり、上記大御所に対峙し見事な演奏を繰り広げたリコーダー界当時の超新星。5歳からリコーダーを学び8歳でプロ・デビュー。10代半ばからヨーロッパのオーケストラに客演、本レコーディング後も多くのリーダー作をPHILIPSなどに録音。
上記のアーティスト以外にも多くの高名な弦楽奏者、鍵盤楽器奏者が参加しています。
最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現
1980年と言えば多くのメジャー・レーベルがアナログからデジタルへと録音方式を転換していく過渡期に当たっています。本作もアナログとしては最後の収録の一つと言えるでしょう。20数年の間に試行錯誤を繰り返しながら、研鑽・努力の末に掴んだレコーディング・テクニックの一部を変換し、新たな試みとまたもやの試行錯誤の時代へと突入する時、その最後の栄光のアナログ・サウンドがここに残されているのです。
アナログ時代はレーベルそれぞれに独特なサウンドが築かれていました。大伽藍のデッカ、みやびやかなグラモフォン、そしてフィリップスは中庸をなす、極めて自然体でデフォルメの少ない音楽を包み込むようなサウンドが魅力でした。その傾向はデジタル時代になってもひっそりと受け継がれてはいましたが、アナログ機器消滅とともに特徴は次第になくなっていきました。バランスがよく穏やかでソフト、しかし物理的なレンジはしっかり確保されたサウンドは、まさにマリナーとアカデミー室内管弦楽団の意図する音楽とピッタリ。その録音・演奏の真髄をこの作品でしみじみ味わって頂けると思っています。
これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
「世界的な名手たちが共演し、それぞれの曲が持つ多様な魅力を鮮明に表現している名演」
「独奏者にはすこぶる豪華な顔ぶれを揃えている。中でもペトリ、ホリガーらが管の技を競い合う第2番、シェリング、ランパルらが円熟したソロを繰り広げる第5番など名人芸を聴く楽しみも大きい。とはいえ全体的にみれば音楽は必ずしも豪華なものではなく、むしろ落ち着いた色調になっているのが特徴。とくに強い主張やめざましい個性を備えた「ブランデンブルク」ではないが、奇を衒わぬ素直な姿勢に好感が持てる。」
『クラシック・レコード・ブックVol.3協奏曲篇』音楽之友社 1985年
「シェリングを筆頭に世界的な名手たちが共演し、それぞれソロ楽器が異なる全6曲の多様な魅力を鮮明に表現している名演である。しかし、それがCD時代になってからあまり知られていないようなのはアナログ録音だったこと、ピリオド楽器による演奏が次第に話題になりつつあった時期だったことなども関係しているのかもしれないが、ハイブリッド盤を聴くと音質もすばらしく、また演奏のすばらしさを再認識するファンも多いのではないかと思う。」
『レコード芸術篇 クラシック名曲名盤300』音楽之友社 1999年
本作ライナーノートより 浅里公三氏
「独奏者たちも、演奏様式の統一にこだわらず、豪華な顔ぶれが召集されている。大御所ヘンリク・シェリングにジャン=ピエール・ランパル。ハインツ・ホリガーもいるし、リコーダーのマンロウは逝去したが新しいスターのミカラ・ペトリがいる。マリナーの用意した大らかな器の中で、各奏者たちが伸び伸びとその個性を発揮しているのだ。」
本作ライナーノートより 矢澤孝樹氏
[収録曲]
■DISC 1
◇ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)
■ブランデンブルク協奏曲全集
協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV1046
| [1] |
第1楽章:- |
| [2] |
第2楽章:Adagio |
| [3] |
第3楽章:Allegro |
| [4] |
第4楽章:Menuetto - Trio - Polonaise |
協奏曲 第2番 ヘ長調 BWV1047
| [5] |
第1楽章:- |
| [6] |
第2楽章:Andante |
| [7] |
第3楽章:Allegro assai |
協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048
| [8] |
第1楽章:- |
| [9] |
第2楽章:Adagio (from BWV 1019a) |
| [10] |
第3楽章:Allegro |
■DISC 2
協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV1046
| [1] |
第1楽章:Allegro |
| [2] |
第2楽章:Andante - 第3楽章:Presto |
協奏曲 第5番 二長調 BWV1050
| [3] |
第1楽章:Allegro |
| [4] |
第2楽章:Affettuoso |
| [5] |
第3楽章:Allegro |
協奏曲 第6番 変ロ長調 BWV1051
| [6] |
第1楽章:- |
| [7] |
第2楽章:Adagio, ma non tanto |
| [8] |
第3楽章:Allegro |
[詳細]
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
指揮:サー・ネヴィル・マリナー
| 録音 |
1980年5月23〜30日、ロンドン、セント・ジョンズ・スミス・スクエア |
| 初出 |
PHILIPS R215127 |
| 日本盤初出 |
PHILIPS 27PC19/20(CD:33CD114) |
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