北欧音楽の粋を極めた真の巨匠がアメリカの卓越したオーケストラとのコラボレーションに成功した究極のシベリウス交響曲作品。
あのデッカ・サウンドがここに甦る。デッカ・レーベルならではの重厚かつ絢爛なサウンドとシベリウス作品の見事な調和がここに!
デビュー以来、ブロムシュテットの主要なレパートリーだったシベリウスの交響曲全集の唯一の録音で、まさに円熟期を迎えていた巨匠ならではの名演から、より音が明晰かつ作品と演奏の魅力を満喫できる人気の第2番と第5番、そして《悲しきワルツ》の3曲をDSDマスタリング& Super Audio CDハイブリッドディスク化。
50歳のころから世界的な本格派マエストロになった遅咲きの巨匠
「自分にとって、演奏とは、神に近づく行為なのです」と語り、誠実で謙虚な人柄が愛されているブロムシュテットは、98歳の2025年10月にも来日、桂冠名誉指揮者を務めるN響とシベリウスの交響曲第5番他の北欧の作品を演奏するなど、いまだ第一線の現役指揮者として活躍する生きるレジェンドです。しかし彼が今のような世界的な名声を勝ち得たのは50歳を過ぎてからのことでした。
生まれたのは1927年7月11日、アメリカのマサチューセッツ州スプリングフィールド。2歳で両親の故郷スウェーデンに移住、牧師の父とピアニストの母から大きな影響を受けた厳格なクリスチャンとして育ちます。その後、ストックホルム王立音楽院と北欧最古のウプサラ大学でオルガン、合唱指揮、音楽学などを学び、さらに指揮をザルツブルクでマルケヴィチ、ジュリアード音楽院でジャン・モレルに師事し、1954年にストックホルム・フィルで指揮者デビューします。以降北欧でオーケストラの首席指揮者を務め、ヨーロッパ各地のオーケストラに客演。大きな転機は1975年。ドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者に就任、ドイツの名門を見事に復興するとともに、録音も積極的に行ない、そこから世界的に名声を高めていきました。
ブロムシュテットはレパートリーの広さでも定評があり、以前からのバッハと古典派、ドイツ・ロマン派、現代と北欧というレパートリーに加え、ドレスデン時代にはブルックナーとマーラーの交響曲、R.シュトラウスの交響詩なども加えていきました。
円熟期を迎えた巨匠ならではのシベリウス演奏
1985年にはドレスデンを退任し、大きく個性を異にしたアメリカ西海岸サンフランシスコ交響楽団の音楽監督に就任します。ここでも彼は“オーケストラ・ビルダー”としての力量を発揮し、ドレスデン同様オーケストラの実力向上に大きく寄与することになりました。
音楽監督を最長の11年務め、録音もベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、ブルックナーとマーラーの主要な交響曲、R.シュトラウスとヒンデミットの管弦楽曲集、ブラームスの合唱曲集とオルフの《カルミナ・ブラーナ》、現代のハービソンとセッションズ、そして北欧の音楽もニールセンの交響曲全集の再録音、ベルワルドの交響曲、グリーグの《ペール・ギュント》オリジナル版などもありますが、とりわけ重要なのがシベリウスの交響曲全集です。
デビュー以来、ブロムシュテットの主要なレパートリーだったシベリウスの交響曲全集の唯一の録音は、満を持していたかのように1989年から95年にかけて行われました。いずれも彫りの深い響きと緻密で豊かな表現はすばらしく、シベリウス特有の北欧的な要素と交響曲としての性格も絶妙なバランスで表現している、まさに円熟期を迎えていた巨匠ならではの名演です。ここでは全集から特に親しまれている第2番と第5番、《悲しきワルツ》の3曲を1枚に収録、より音が明晰になり作品と演奏の魅力を満喫できるディスクが完成しました。
巨匠の意に十二分に応えるアメリカのオーケストラ、その卓越した技量
アメリカのビッグ5と言われているニューヨーク・フィル、シカゴ交響楽団、ボストン交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団と同格とされている実力派オーケストラがサンフランシスコ交響楽団です。1911年発足と歴史は古く、首席指揮者をみてもモントゥー(1935年就任)、小澤征爾(1970年就任)、デ・ワールト(1977年就任)、そしてブロムシュテット(1985年就任・桂冠)、ブロムシュテットの後任にはティルソン=トーマス(就任1995年・桂冠)と、実力者揃い。常に多くのレコーディングをさまざまなレーベルで行ってきました。そうした中でもブロムシュテットがこのオーケストラに植え付けた正確なリズムフィギュアと構築性はその実績の現れです。世界でも屈指の実力者集団に変貌を遂げたオーケストラは、シベリウスの調性感の希薄な、時には無調に近い響きになるところや、リズムの複雑な絡み合いなど難解な部分においても、盤石の安定感を示します。ブロムシュテットはそのオーケストラをリードし、そのうえでシベリウスのデリケートな色彩のうつろい、リズムの変化を緻密に表現することに成功しています。まさに巨匠の腕の見せどころと言っていいでしょう。
シベリウス交響曲の中でもとりわけ重要な2作品
ここに収められたシベリウスの交響曲は彼の作品の中でも特に人気の高い2作品です。1902年に完成し、同年に初演、イタリア滞在の印象が強かったためか、シベリウスの作品としては明るさが特徴的な第2番ですが、その反面でアンサンブルの難しさは筆舌に尽くしがたい部分もあり、「わかりやすさ」の箇所だけに頼りすぎた演奏は通用しない“隠れた難曲”とも言われる、指揮者泣かせの作品でもあります。
1915年に完成した第5番は数回の改訂を経て1919年に現在の版になり、第4番同様、技法的な難解さが牙を剥き出している、まさに難曲です。それにも拘らずブロムシュテットの演奏は、そうした難しさを平常心でクリアし、北欧の雄大な情景を我々に、まさに自然体で示してくれる、懐の広い演奏に終始しています。シベリウス愛好家、一般愛好家、どちらの方々にも受け入れて頂ける演奏がここでは展開されています。
最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現
アナログ時代のデッカ・サウンドと言えば大伽藍、重厚な低音、輝くような高域が魅力でしたが、1990年代も後半になると、そのサウンドの個性は薄れていきました。デジタル録音全盛となり、各レーベル一定のサウンドが求められるようになったこともあるでしょうが、最大の出来事はデッカとフィリップスの合併でした。どちらもレーベル名は残すとのことでしたが、その違いはレパートリーなどを含む音楽内容のことに重きが置かれ、デッカとフィリップスという大レーベルの個性豊かなオーケストラ表現のサウンドに対しての注目度は低かったのも事実でした。21世紀になると、もうデッカ・サウンドは存在しなくなりました。
本作が残された時代はまだ、最後のデッカが味わえる貴重なサウンドが残されているのです。ショルティの『ニーベルングの指環』でも知られる名プロデューサー、ジョン・カルショウの下で活躍していたスタッフの意志を受け継ぐエンジニアがここでも入念な収録を行っています。
1989年録音の第5番を担当したエンジニア、ジェイムズ・ロック。彼はCD初期にその高音質でオーディオ・ファンに大きな注目を浴びたショルティ指揮マーラー:交響曲第3番(1982年)の録音を担当、輝く金管、重厚な床が唸るような低域を再現、CD特有の弱音時の微かに聴こえるティンパニの重低音をも再現した人で、彼は後に『ニーベルングの指環』のデジタル用リマスタリングも手掛けました。その後いくつかリリースされたディスクはすべて“ジェイムズ・ロック・マスタリング”が使われているように、デッカ・サウンドの隅々までを体得している人なのです。そうした彼らが受け継ぎ生み出したサウンドを、今回も忠実に再現するようにマスタリングを行いました。
これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
「シベリウスの音楽の繊細な美しさを深いレベルで味わうことのできる名演」
「ブロムシュテットはサンフランシスコ交響楽団というヨーロッパ的資質を持ったアメリカのメジャー・オーケストラの機能や音色を、いわば北欧的なものに近づけているばかりでなく、シベリウスの音楽を様式的にも確実にとらえている。」
『クラシック名盤大全交響曲篇』音楽之友社 1998年
「第2番は極めて作品に誠実な姿勢を持った演奏で、確実な表情の音楽を聽かせる。スケールは大きく、豪壮に音楽が起伏している。テンポにゆとりがあり、主題が朗々と歌うのもよい。この作品の本質を直裁に示した名演である。第5番ではこの曲もつ牧歌的な様相を発見させてくれる。しかも音にはリアルな力が漲っている。旋律をよく流動させ、音楽の完全な構図が示される終楽章の的確な解釈は見事としか言いようがない。」
『レコード芸術篇 クラシック名曲名盤300』音楽之友社 1999年
(交響曲 第5番)
「一つ一つの音にこめられた透明感と陰影、磨き抜かれた音の壮麗さと奥深いダイナミズムによって繰り広げられる音楽の世界は、叡智と美の結晶を思わせる。外国のオーケストラにとってシベリウスは必ずしも理解し易いものではない。ブロムシュテットは自身の豊かな経験と学識、北欧人の感性によって見事にしかも最高にシベリウスの世界を実現した。」
「第2番は極めて作品に誠実な姿勢を持った演奏で、確実な表情の音楽を聽かせる。スケールは大きく、豪壮に音楽が起伏している。テンポにゆとりがあり、主題が朗々と歌うのもよい。この作品の本質を直裁に示した名演である。第5番ではこの曲もつ牧歌的な様相を発見させてくれる。しかも音にはリアルな力が漲っている。旋律をよく流動させ、音楽の完全な構図が示される終楽章の的確な解釈は見事としか言いようがない。」
『レコード芸術編 名曲名盤300』音楽之友社 1993年
「彫りの深い響きと緻密で豊かな表現はすばらしく、シベリウス特有の北欧的な要素と交響曲としての性格も絶妙なバランスで表現している、まさに円熟期を迎えていた巨匠ならではの名演である。」
本作ライナーノートより 浅里公三氏
「盤石の安定感があり、そのうえでシベリウスのデリケートな色彩のうつろい、リズムの変化が緻密に表現されている。浮遊的な音響が続く中で歌われていく各声部の表情もしっかりとわかる。デフォルメを排した演奏は、表面上、地味に聞こえるかもしれない。しかし、注意深く耳を傾けるなら、シベリウスの音楽の繊細な美しさを深いレベルで味わうことのできる名演だ。」
本作ライナーノートより 増田良介氏
[収録曲]
◇ジャン・シベリウス(1865-1957)
■交響曲 第2番 ニ長調 作品43
| [1] |
第1楽章:Allegretto |
| [2] |
第2楽章:Tempo andante, ma rubato |
| [3] |
第3楽章:Vivacissimo - Lento e suave |
| [4] |
第4楽章:Finale. Allegro moderato |
■交響曲 第5番 変ホ長調 作品82
| [5] |
第1楽章:Tempo molto moderato - Allegro moderato |
| [6] |
第2楽章:Andante mosso, quasi allegretto |
| [7] |
第3楽章:Allegro molto |
| [8] |
悲しきワルツ 作品44の1 |
[詳細]
サンフランシスコ交響楽団
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
| 録音 |
1991年5月27〜28日[1-4, 8]、1989年5月30日〜6月3日[5-7]サンフランシスコ、デイヴス・シンフォニー・ホール |
| 初出 |
DECCA 433 810-2[1-4, 8]、DECCA 425 858-2[5-7] |
| 日本盤初出 |
LONDON POCL5168[1-4, 8]、LONDON POCL5286[5-7] |
| オリジナル・レコーディング |
[プロデュサー]アンドリュー・コーナル
[レコーディング・エンジニア]ジョン・ペロウ[1-4, 8]、ジェイムズ・ロック[5-7] |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。