ブルックナー演奏の第一人者ヨッフムの人生における集大成とも言われた交響曲全集からの極上な2曲。滋味あふれる素晴らしいサウンドのシュターツカペレ・ドレスデンがヨッフムの求めたブルックナーを魅力的に表現。
ドイツ音楽の伝統を正統的に継承する巨匠として多くの録音を残し、ブルックナー演奏の第一人者として尊敬されていたオイゲン・ヨッフム、彼の集大成とも言われる2回目のブルックナー交響曲全集の録音の中から、特に注目された交響曲2作品をDSDマスタリング& Super Audio CDハイブリッドディスク化。
ヨッフムのブルックナー演奏のうちでも頂点を極めた2つの名曲・名演
ドイツ音楽の伝統を正統的に継承する巨匠として多くの録音を残し、ブルックナー演奏の第一人者として尊敬されていたオイゲン・ヨッフム、彼の集大成とも言われる2回目のブルックナー交響曲全集の録音の中から、特に注目された交響曲2作品をSuper Audio CDハイブリッド化しました。ブルックナー録音も数多く残しているヨッフムですが、本作はベルリン・フィル(5曲)とバイエルン放送響(4曲)を指揮した最初の交響曲全集(1958〜67 年、ドイツ・グラモフォン)に続く第2弾として発表された全集で、ブルックナー指揮者ともいわれたヨッフムのまさに最終完成形とも言えるシュターツカペレ・ドレスデンとの極めつきのパフォーマンス。ヨッフムのブルックナー演奏のうちでも頂点と評すべき演奏と言えるでしょう。
東ドイツ時代のシュターツカペレ・ドレスデンの音色は暖かく美しく、ヨッフムの指揮は、豪快で力強い。力感あふれるクライマックスの強奏も緩徐楽章の深みのある演奏には何時もながら聴き惚れてしまいます。この響きが聴けるだけでもこの録音にはかけがえのない価値があると言えるのです。
ステレオ時代、LP絶頂期に加速度的に急増したブルックナー演奏
生誕200年を迎えたブルックナーは、ロマン派を代表するオーストリアの作曲家ですが、広く知られるようになったのは20 世紀の後半になってからでした。ステレオLPが登場した1958年版の国内盤レコード・カタログにはまだ1曲もなく、1959年になって第4番(ヨッフム)と第8番(カラヤン)、第9番(カイルベルト、ヨッフム)がリリースされるという状況だったのです。1960年代、ステレオ・ブームに入り、長い曲も受け入れられるようになってきた状況も加わり、ブルックナーの録音も多くなります。前述のヨッフムによるベルリン・フィルとバイエルン放送響を指揮した最初の交響曲全集(グラモフォン)も一つの契機となり、ブルックナーのレコードは加速度的に急増して行きました。
ヨッフムとブルックナー、特別で密接な関係性
前述のように、まだブルックナーが国際的にはあまり知られていなかった20世紀の前半から、オイゲン・ヨッフム(1902〜87)は、その普及に最も貢献した巨匠でした。ドイツ南部バイエルン州のバーベンハウゼンに生まれ、音楽院でオルガン、ピアノ、作曲を学んだ後、ミュンヘン・フィルの指揮者ジークムント・フォン・ハウスエッガーに認められて指揮を学び、ブルックナーの原典版演奏の先駆者だった師から大きな影響を受けます。そして1926年にミュンヘン・フィルを指揮してブルックナーの交響曲第7番でデビュー、1934年から49年まではハンブルク国立フィルと歌劇場の音楽監督を務めてオペラでも活躍しましたが、とくにブルックナーは高く評価され、1932年から毎シーズン客演したベルリン・フィルでも第2、3番を除く7曲を指揮します。当時、ブルックナーの交響曲は、シャルクやレーヴェなどの改訂版による演奏が一般的でしたが、ヨッフムは発表されて間もない原典版による演奏を率先して行いました。
第2次大戦後、ヨッフムは1949年に創設されたバイエルン放送響の初代首席指揮者に就任してベルリン・フィルに匹敵するオーケストラに育成するとともに、世界各地でバッハの宗教曲から20世紀のオルフまでのドイツとオーストリアの作品を主要なレパートリーにして名声を高め、1961〜64年に首席指揮者を務めたアムステルダム・コンセルトヘボウ管を最晩年まで指揮、1960年代から関係を深めたバンベルク響、ロンドン響やロンドン・フィルの首席指揮者や首席客演指揮者も務め、1977年にはロンドン響から桂冠指揮者の称号を贈られるなど、世界的な巨匠として活躍しました。
その間に多くの録音も残したヨッフムですが、とりわけ重要なのはブルックナーの交響曲でした。LP初期からブルックナーの交響曲を手掛け、ステレオ録音時代を迎えた1958年から67年にかけて前述の世界初となる交響曲全集(以上グラモフォン)を完成させます。円熟期を迎えていたヨッフムは1970年代に入っても多くの名演を刻み、そしてドレスデン(シュターツカペレ)とのブルックナー交響曲全集録音に着手したのです。2度目のブルックナーの全集の中で、今回の第4番、第9番の2曲を収録した本作は作品の本質を表現するヨッフムの真骨頂が最高度に発揮された名演といえるでしょう。そしてまたシュターツカペレ・ドレスデンの豊潤な響きとルカ教会の音響を知り尽くした名エンジニア、クラウス・シュトリューベンによる録音もすばらしく、すべてを満喫できるハイブリッド盤に仕上がりました。
老舗中の老舗、シュターツカペレ・ドレスデン
1548年ザクセン州の選帝侯によって創設された宮廷聖歌隊・宮廷楽団を起源とするシュターツカペレ・ドレスデンは圧倒的な老舗中の老舗です。その歩みはドイツの音楽史そのものといっても過言ではありません。その後、繁栄を謳歌した時代もありましたが、1948年第2次世界大戦により劇場は破壊されてしまいます。しかし当時の東ドイツ政府が復興に着手し、60年代後半にはドレスデンにて再興、この録音が行われた70年代はまさに冷戦真只中の時代、オーケストラ・メンバーの実力とは不相応なやや品質の劣る楽器を駆使しながら音楽を奏でるそのサウンドは華やかな音色というよりは、滋味深い、静謐な、しかり力強い音の傾向になり、これがまたヨッフムが意図する音楽と合致し、見事な効果をあげ、作品の魅力を高めている要素の一つとなっています。加えて録音会場であったザクセン州ドレスデン南郊地区にある福音主義教会、ルカ教会の音響もオーケストラ・サウンドの独特な響きを最適な状況で収録する一役を担っていると思われます。
LP全盛期のオリジナル・マスターのもつ情報を余すところなく…
2曲ともアナログ円熟期の名盤ですが、Super Audio CDハイブリッド化は2017年の全集BOXセットに続き、今回が2度目となります。これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
「音楽的なぬくもりを感じさせる演奏。シュターツカペレ・ドレスデンの深く渋い響きがこの曲にさらなる潤いを与えている」
「ヨッフム最円熟期の収録。オーケストラの持ち味を尊重し、その響きの魅力を最大限に活かしながら作品の個性を描き分ける手腕は巨匠ならではのもの。格調の高さは比類がなく、過度に自我を主張することなく大きな感動で聴き手を包みこんでいく。細部への配慮も旧全集以上に行き届いており、その積み重ねが壮大な音楽の流れを形成していく。」
『クラシック不滅の名盤1000』2007年 ONTOMOMOOK 音楽之友社
「ここで聴くシュターツカペレのひびきは形容を絶する美しさであるが、名指揮者ヨッフムもこのひびきに惚れ込んでしまったに違いない。とくにブルックナーにはよい。いぶし銀のようなまろやかな音彩の魅力があの柔らかなドレスデンの初夏の日を思い出させる。」
『不朽の名盤1000』1984年 音楽之友社
「ブルックナーへの情熱が見事に結実した第2 回目全集。第1回目に比べ、よりスケールは大きく、ロマン的な抒情性や宗教性にも富んだ演奏である。ノーヴァク版使用。」
『演奏家別クラシック・レコード・ブックVol.1 指揮者篇』1987年 音楽之友社
「第4番はブルックナーの巨大な音楽構造の中に、音楽的なぬくもりを感じさせる演奏となっている。かなりなテンポの変化を設けて情熱的なうねりも聴かせブルックナーがロマン派の作曲家であったことを強く意識させている。ドレスデン国立管の深く渋い響きがこの曲にさらなる潤いを与えていることは言うまでもなく、ダムのホルンも一際ここで活躍している。」
『クラシック名盤大全 交響曲篇』1998年 ONTOMOMOOK 音楽之友社
「第9番は意志的なブルックナーである。切迫したスピードのスケルツォ、テンポのロマン的な動きの多い第1楽章など、疑問がないではないが、指揮者がブルックナーの本質を捉え切っているので、その音のドラマが音楽を決して損なわないのが立派である。」
『レコード芸術篇 名曲名盤300』1999年 ONTOMOMOOK 音楽之友社
[収録曲]
◇ヨハン・シュトラウス II世(1825-1899)/ ヨーゼフ・シュトラウス(1827-1870)
[DISC 1]
■交響曲 第4番 変ホ長調《ロマンティック》(1878/80年稿、ノーヴァク版)
| [1] |
第1楽章:Bewegt, nicht zu schnell |
| [2] |
第2楽章:Andante quasi allegretto |
| [3] |
第3楽章:Scherzo: Bewegt – Trio: Nicht zu Schnell, keinesfalls schleppend |
| [4] |
第4楽章:Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell |
[DISC 2]
■交響曲 第9番 ニ短調(ノーヴァク版)
| [1] |
第1楽章:Feierlich, misterioso |
| [2] |
第2楽章:Scherzo: Bewegt, lebhaft – Trio: Schnell |
| [3] |
第3楽章:Adagio – Langsam, feierlich |
[詳細]
シュターツカペレ・ドレスデン
指揮:オイゲン・ヨッフム
| 録音 |
[交響曲 第4番] |
1975年12月1〜7日、ドレスデン、ルカ教会 |
| [交響曲 第9番] |
1978年1月13〜16日、ドレスデン、ルカ教会 |
| 初出 |
[交響曲 第4番] |
ETERNA 8 27 533/4(1982年) |
| [交響曲 第9番] |
ETERNA 8 27 197(1979年) |
| 日本盤初出 |
[交響曲 第4番] |
東芝EMI/Angel EAC-90104(1982年3月) |
| [交響曲 第9番] |
東芝EMI/Angel EAC-90086(1982年5月) |
| オリジナル・レコーディング |
[プロデューサー] |
[交響曲 第4番]デイヴィット・モットレー
[交響曲 第9番]ライマー・ブルート |
| [バランス・エンジニア] |
クラウス・シュトリューベン |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。