オリジナル・マスター・サウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で継続して高い評価をいただいているエソテリックによる名盤復刻シリーズ。発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤をオリジナル・マスターからDSDマスタリングし、世界初のSuper Audio CDハイブリッド化を実現してきました。1970年代のポリーニによる先鋭的かつ濃密な演奏を記録した名盤の中から、1975年に録音されたショパンのポロネーズ集を発売いたします。
■「切れ味の良いリズム、鍵盤を打ち抜くかのような衝撃的かつ重厚な和音から繊細精妙に彫琢されたピアニシモにいたる表現の幅の大きさ、そして一点の曇りのない明晰さ」
「ポリーニの弾くショパンのポロネーズには、人間の屈折した熱情のたぎりと、疑いもなく、魂のもっとも奥深くに達している沈潜がある。それもおそろしく醒めた魂の。(・・・)ポリーニのリリシズムは、その裏に言い難い烈しさをたたえ、熱情の陰では恥じらいを秘めた知性が糸を引いているのだが、これもまた、ショパンのすぐれた傑作に見られる特質に他ならないと言えるだろう。そうしたとき、ショパンの夢想は常に意識のもとに統御され、正確に書きとどめられるべきものとしあったのだ。」
初出盤ライナーノーツより 1976年
「ポリーニは、どんな細かい部分も技術的に完全に再現せずにはおかない高度のテクニックをもって弾いている。彼の演奏には不安的なところが少しもない。それは単に指の運動が正確無比であるという点にとどまらない。聴き手を絶対的に安心させ、信頼せるゆるぎがないテクニックが身に備わっているのが実感できる。そして弾き出される音の質や色が充分に吟味され、その結果、硬い輝かしい音が作り出されることになるのである。第3番《軍隊》や第6番《英雄》など解放的で明解な性格の作品では、ポリーニの力はフルに発揮されている。彼の器の大きさが顔を見せている演奏である。」
『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 交響曲編』1997年
「デュトワの音楽監督就任以来、実力をつけてきたモントリオール響の真骨頂を聴くことのできる最良の1枚。両者はとりわけラヴェルの演奏を残しているが、デュトワの計算しつくされた巧みな設計とオーケストラの一糸乱れぬアンサンブルは、聴く者の心を魅了せずにはおかない。美しい響きを十全にとらえた録音も第1級のもの。」
「レコード芸術」推薦 1977年1月号
「ポリーニの演奏にまず何といってもその最弱音から最強音にいたるピアノの音色の美しさに魅了される。このポロネーズの演奏ではとかくダイナミックで壮大な表現を意図してそうした意気込みが先に立ち、音が濁って感情だけが空回りする危険性もあるのだが、ポリーニの演奏にはさすがにそれがなく、音自体に即した見事な緊張感を引き出している。それでいて情緒もあり、抒情的な旋律の流れもロマン的だから、聴いていて思わず音楽の中に引き込まれる。」
『クラック・レコード・ブックVOl.4 器楽曲編』1985年
「ポリーニが生み出す音は本質的に硬い。けれども最弱音から最強音にいたるまで、細心の注意を払って丁寧に磨き上げられているため、硬さは迫力や緊張を強めるのに役立つことはあっても、決してマイナスになることがない。耳に快い強音――これがポリーニの強みになっている。ポリーニのこの音に慣れてしまうと、強度不足のもろい音によるポロネーズが、頼りなくなってしまう。」
『クラシック名盤大全 室内楽曲編』1998年
「きわめて洗練されたピアニズムと独自の音楽性を持つポリーニのポロネーズは、ポーランドの伝統的なそれとは趣を異にする。切れ味の良いリズム、鍵盤を打ち抜くかのような衝撃的かつ重厚な和音から繊細精妙に彫琢されたピアニシモにいたる表現の幅の大きさ、そして一点の曇りのない明晰さ。また、純粋な音響美を追求しつつも、抑圧的な苦悩の色合いに満ちた第2番や輝かしい《軍隊》など、これらの作品に内在する精神性も忘れな。完成度の高い名演だ。」
『ONTOMO MOOK クラシック不滅の名盤1000』2007年
「完璧な技巧というものは、曲の形のみならず、心をもこよなく表現しうる、ということの見本。どの曲においても、ショパンがこの曲種にこめた祖国への濃い情念が、しっかりと、奥深く表現されている。情に流されるショパンではなく、造型感覚にも秀でていた彼を、ここに聴く。」
『最新版・クラシック不滅の名盤1000』2018年